宮本しゅうじ対談_vol.04

青年部の事業を継続するために「やるか」「やらないか」

辻 佑輔(つじ・ゆうすけ)

寒河江市内で理美容室「Hairsalon toccare(トッカーレ)」を運営。理容師として、国内のコンテストでの優勝はもちろん、日本代表として世界大会で団体金メダル、個人でも銅メダルを獲得。現在は、選手を引退し、後進の指導にあたりながら、店を経営している

宮本しゅうじ対談_vol.04
ヘアーワールドカップ2014年フランクフルト大会団体金メダル/個人銅メダル表彰式にて(最後列右から5 人目が辻さん) 
宮本しゅうじ対談_vol.04
青年部員が子どもたちに自社の職業を体験させる。「ハンカチデザイナー」の仕事に並ぶ子どもたち

「月刊商工会」より
https://www.shokokai.or.jp/shokokai/gekkan/

青年部のこども職業体験事業を継続する資金が課題

辻― 山形県のほぼ中央にある寒河江市で、理美容室を経営しています。父母もこの地で理美容業をしており、僕もその店で働いていましたが、青年部への入部をきっかけに先輩たちから刺激を受け、自分の店を開きました。
宮本―  理容世界大会に日本代表として出場し、団体金メダルや個人銅メダルを獲得するなど素晴らしい経歴をおもちの辻さんが、今は商工会青年部で積極的に活動されているようですね。
辻― 青年部で僕が委員長のときに始めたのが、「コドモモシゴト」という、地域の子ども向け職業体験事業です。青年部員の事業所の職業体験をしてもらうことで、寒河江にこんな会社や仕事があることを伝えたくて始めました。
 過去に2回実施し、とても反響があり、昨年は子どもが500人以上、保護者も含めて1800人くらいの来場がありました。青年部員は約100人ですが、ブースは約60。総勢約90人の部員が関わりました
宮本― すごいですね。来場者数もさることながら、ほとんどの青年部員が参加しているというのが素晴らしい。
辻― ありがとうございます。市や市内高校生にもボランティアなどの協力をいただいて地域で盛り上げています。この事業を通して、各事業所のPRを実施しながら、働く楽しさやお金を稼ぐことの難しさを学んでいただきたいです。この事業を継続していくのに青年部の自己資金だけでやっていくのも難しく、事業資金が課題となっています。
宮本― なるほど。そういう課題があるのですね。そこでですが、今一度、なぜその事業を行うのかを、青年部で考えてみてはどうでしょう。
 辻さんたちが、子どもたちに将来は寒河江で仕事をしてほしいというのであれば、皆さんで資金を集める工夫を考えてみるのです。

部員たちと事業の意義を共有できたら、「やるか、やらないか」

宮本― 私が青年部の単会時代、大人も子どもも楽しめるドッジボールのイベントを実施したことがあります。その資金を集めるために、青年部の現役、OB、商工会員の事務所を訪ね歩いて協賛金を募りました。それでも足りない分は、毎年開催される地域の夏まつりに模擬店を出店し、その収益金をイベント実施資金に充てるなど、部員が一丸となって取り組みました。
 あとは、その思いに部員がついてきてくれるかです。辻さんたちの事業はとてもいい取り組みなので、なぜそれをするのかを部員としっかり共有できれば、資金確保の知恵も自然に生まれると思います。
辻― そうですね。自分たちで知恵をしぼり、汗をかかなければいけませんね。それに、部員のこの事業へのモチベーションづくりも必要ですね。
宮本― 事業を行う意義が共有できたら、「やるか、やらないか」だけだと思うんです。これは私の青年部時代の経験からもいえることですが、「できるか、できないか」だと、議論が堂々巡りで前に進みません。「やる」と決めれば、実現のために「どうすればいいのか」を考えて、次のステップに進めるのです。
辻― 貴重なアドバイスをいただきました。僕は、地域の人たちが我が子のように接して、育ててくれたこのまちにとても愛着があります。そんなあたたかい地域を残して、子どもたちに郷土愛をもってもらえるよう、これからもこの事業に取り組んでいきます。
宮本― 昔は、地域が子どもを育ててくれていましたね。そういえば私も、同級生の家が理容店で、土曜日の学校帰りはよくそこで昼ごはんをごちそうになっていたなぁ(笑)。辻さんは、理容技術のコンテストなどで、さまざまな世界を見てこられたからこそ、足元にある大切なものに気づくことができたのかもしれませんね。これからもがんばってください。