宮本しゅうじ対談_vol.05

商工会の支援事例を知った地域の事業者に新たな伴走支援が広がる

松下 暁紀(まつした あきのり)

中津川北商工会エリア1 主幹・付知支所担当、経営指導員。長野県大桑村出身。ホテルマンから商工会に転職。岐阜県連などを経て現職。昨年12月の経営支援事例発表全国大会で最優秀賞を受賞

宮本しゅうじ対談_vol.05
商工会の支援を通じ開発された木製キャップ「コプリーレ」 
宮本しゅうじ対談_vol.05
事業者は展示会出展などにより販路を広げている

「月刊商工会」より
https://www.shokokai.or.jp/shokokai/gekkan/

自社ブランド製品開発への思いに伴走支援

宮本―   松下さんは昨年、経営支援事例発表全国大会で、事業者に寄り添った伴走支援が評価され、最優秀賞を受賞されました。
松下― ありがとうございます。中津川北商工会の地域のなかでも、山間部の付知町は「木のまち」と呼ばれ、古くから林業が盛んなまちです。そんな土地柄から木工製品をつくる事業者も多く、発表したのも、木工所の課題解決のために伴走支援した内容です。
 OEM中心だった事業者さんから、自社ブランド製品をつくって利益率を上げたいという相談を受けたのが支援のきっかけでした。事業者さんは最初、県農商工連携ファンドなどを活用しながら、木製のインテリア雑貨をつくって展示会に出展したのですが、類似商品との差別化を図ることができず、うまくいきませんでした。そこで、目をつけたのが、地域の間伐材などを活用してつくることができる、瓶につける木製のフタ(キャップ)だったんです。
宮本―  つまり今回の支援で開発した自社ブランド製品というのが、このガラス瓶のフタになっている木製のキャップですね。木のぬくもりが伝わってきていいですね。木の新しい価値を生み出していて、今後の展開を想像するだけでも、ワクワクしますね。
松下― 現在では、「コプリーレ」という商品名で販売されていて、温かみのある木目の風合いが評判で、液体を入れても漏れない気密性の高さでも評価を得ています。付加価値の高い容器として、都内のホテルのアロマキャンドルの容器のフタに使われたり、化粧品業界などからも注目を集めています。
 その結果、オリジナル商品が売り上げ全体の半分以上になり、念願のOEM依存体質からの脱却を図ることができました。

現場の声に耳を傾け、よりよい政策を実現

宮本― このような支援事例は職員のネットワークなどで広く共有して日々の業務にも反映しているのですよね。
松下― はい。商工会の経営指導員や職員はもちろんですが、地区懇談会などを通して、会員事業者さんにも支援事例を紹介して、お伝えするようにもしています。
 今回の木工所の支援事例でも、支援成果が木工業者の同業者でつくる会のメンバー事業者や、これまであまり商工会と接点がなかった林業関係者へも徐々に知られていったことで、声がかかり、新たな支援へとつながっています。
宮本― 今回の支援で、OEM依存から脱却でき、商工会の支援がよいと感じてくれたから、同じ課題をもつ事業者さんが相談してくれるわけですね。
 商工会が支援制度の狙いを把握したうえでしっかり運用し、会員さんも商工会を経営判断や相談の拠り所にしている証なのでしょう。

 私たちは、支援制度をつくることはできるのですが、その制度をきちんと機能させて、事業者の持続的な発展につなげていくには、松下さんたち経営指導員の方々の日々のたゆまぬ取り組みがあってのことだと思っています。
松下― 話は変わりますが、実は3年前、できたばかりの省エネ補助金の使い勝手が悪く、少しでも改善できたらと思い、失礼ながら宮本さんにメールでそのことをお伝えさせていただきました。その際は力強い返信をいただき、また制度もその後使いやすく改正されました。ありがとうございました。
宮本― あのときは省エネ補助金ができたばかりで、制度運営で不具合が多々ありましたからね。
 私は、制度をつくるうえで、とくに現場の声を大切にするように心がけています。経営指導員の方々や事業者の皆さんからの声をしっかりとうかがうために、全国を飛び回っています。松下さんのように、現場から声を上げてもらうことはとてもありがたいことです。私は、商工会のなかの国会担当ですから、これからも現場の声に耳を傾け、ブレることなく、活動していきたいと思っています。