宮本しゅうじ対談_vol.07

地域の持続的発展のために創業、事業承継支援でサポート

澤田 裕一(さわだ ひろかず)

米子日吉津商工会(西部商工会産業支援センター管内)事務長。
経営支援専門員。西部商工会産業支援センター勤務を経て、今年度から現職

宮本しゅうじ対談_vol.07
西部商工会産業支援センター管内が実施する創業セミナー。2014年に企画し、市区町村と連携して現在も継続実施
宮本しゅうじ対談_vol.07
「大山時間」プロジェクトのロゴ。この地で悠久的な時の流れを味わってほしいと、星・太陽・大山・川・海を砂時計で表現

「月刊商工会」より
https://www.shokokai.or.jp/shokokai/gekkan/

強みを見出して成功する創業を支援

澤田― 私が事務長を務める米子日吉津商工会は、中国地方最高峰の大だ山せんの麓にあります。鳥取県では、東部、中部、西部に商工会産業支援センターを設置して企業支援を行う体制をとっています。私も昨年まで西部商工会産業支援センターにおり、複数の職員と一緒に農業生産法人やメディカルペット美容院など特徴ある創業を支援してきました。
宮本― それはがんばっておられますね。少子高齢化による生産年齢人口の減少が避けられない今、地域の持続的発展は大きな課題です。その対策のひとつとして、創業支援はとても大切ですよね。
澤田― 私たちもそこを危惧しており、そのために商工会ができることの一つが、創業支援だと考えています。そこで創業スクールやセミナーを開催し、事業者さんのもつ強みを引き出して、創業へと導くお手伝いをしています。
宮本― 先日、広島県の三次広域商工会を訪ねた際、商工会がチャレンジ店舗として使っていた建物で創業したばかりのカフェに伺いました。過疎化が進んでいる地域にも関わらず、1日100人ものお客さんが来るそうです。それも地元のお年寄りから地域外の若者まで。おそらく地域に寄り添いながら、さまざまな取り組みを行ってきたのでしょう。
 ターゲットを分析し、明確にしたうえで具体的なアクションプランを立てる。これがしっかり整っていれば、どのような環境でも事業は可能だと感じさせられました。そのためにも商工会のサポートには期待したいですね。

何のために商売を続けるのか

澤田― 鳥取県西部の7商工会では少子高齢化などによる顧客減少に対応するため、域外からの誘客を図ることを目的とした「大山時間」 プロジェクトに取り組んでいます。事業者と地域の強み・魅力を域外に伝え、地域産業の活力を維持したいと考えています。
 地域の産業力を維持するにあたっては事業承継も重要な課題です。鳥取県連ではアンケートによる実態調査を行ったり、事業承継の重要性の啓発に取り組んでいるのですが、まだまだ事業者さんに伝えきれていません。

宮本― 事業承継には後継者の有無や経営状態などの問題もありますし、個人資産と事業用資産の区別が曖昧な場合には、第三者への継承も難しいのが実情です。とはいえ事業活動は、地域や取引先、消費者の求めがあるからこそ、成り立っているものです。こうした社会貢献の視点で考えるならば、事業の継続を考えるのは、経営者さんにとっての務めでもあるといえますよね。
澤田― 事業所が続けば、経済も雇用も地域の魅力も維持できます。宮本さんには政策で尽力していただいているので、私たちも粘り強く事業承継の必要性を知ってもらい、支援を深めていきたいと思います。
宮本― 事業とは本来、「誰のために」「何のために」やっているのかが重要だと思っています。とかく、人間はつい目先の問題に捉われてしまいがちです。たとえば商品の場合、商品をつくることが目的ではなく、誰のために、何のために商品をつくるのか。その本質を理解して取り組むことが、事業の継続につながるのではないでしょうか。
澤田― 創業においても目的と手段、目標が明確に計画されている事例はうまくいく可能性が高い。本質を見失わないように側から助言することも、私たちの商工会の役目といえますね。
宮本― 私は、地域が抱える課題に対して、ただマイナス面を解消する方法を模索するだけではなく、もっとプラス思考でワクワクドキドキするような取り組みが必要なのではないかと思っています。そもそも商売とは、プラス思考の自己実現ですね。このワクワク感こそが人を動かすのではないでしょうか。そんな事業者さんがワクワクしながら働ける制度をつくるため、私も一生懸命取り組んでいきます。