宮本しゅうじ対談_vol.08

青年部活動で地域グルメや防災対策マニュアル作成に挑戦

平野 允友(ひらの まさとも)

居酒屋「たいらと和味」店主。王寺町商工会青年部副部長。7年前に焼鳥店を創業、昨年、駅前に現在の店を移転・リニュ
ーアルオープン。イベント企画設営会社も経営

宮本しゅうじ対談_vol.08
雪丸をイメージした真っ白なスープが特徴的な、王子町商工会青年部考案の「雪丸鍋」
宮本しゅうじ対談_vol.08
全国に先立って考案された「奈良県商工会青年部連合会防災・災害支援対策マニュアル」

「月刊商工会」より
https://www.shokokai.or.jp/shokokai/gekkan/

〝何もない〟地域で新名物の鍋料理を発信

平野― 私が居酒屋を営んでいる奈良県王寺町は、大阪府と接する県北西部にある人口約2万4000人のまちです。大阪のベッドタウンとして住宅地が広がっています。そのため、住宅と山しかなく(笑)、特産品や名物がまったくありませんでした。そこで4年前、王寺町商工会青年部で考えたのが「雪丸鍋」です。

宮本― 雪丸とは、聖徳太子が飼っていたという愛犬の名前ですよね。
平野― そうです。王寺町は、聖徳太子の葬送の道が通っていたことから、太子ゆかりの地で、2011年に商工会が雪丸のゆるキャラをつくりました。これをテーマに鍋料理を発信することになり、飲食店経営の私が中心となって開発しました。
宮本― どんな鍋料理なのですか。
平野― 雪丸のゆるキャラの白にちなんだ牛乳を使ったスープで、チ ーズなどをトッピングしています。私の店はもちろん、町内の飲食店数店で冬の限定メニューとして提供しています。ただ、地元には特徴を出せる食材がなかったので、とにかくゼロからのスタートでした。
宮本― それこそ平野さんたちの頭のなかも真っ白な状態だった(笑)。でも、だからこそ自由な発想で現代風の鍋が完成したのでしょうね。想像しただけでも、クリーミーで、とてもおいしそうです。

平野― 食育の一環で、町内の保育園で園児たちに提供したら、大変喜んでくれました。これからもっと多くの人に、雪丸鍋を発信していきたいのですが、もっと特徴を出せたらと思っています。
宮本― たとえば町内の店舗で提供するなら、独自にトッピングを変えるなど、基本は変えずに店それぞれのアレンジを加えてみてはいかがですか。そうすれば、お客さんも楽しめるし、店にとっても個性が出て、集客につながるのでは。園児や保護者など消費者の声を反映して、発展させることもできそうですよね。

災害支援のルールを決めたマニュアルを全国に公開

宮本― 奈良県商工会青年部連合会の取り組みで、防災対策にも尽力されているそうですね。
平野― 県青連の地域支援対策部会に参加して、4年前から防災・災害支援対策マニュアルを作成しています。県外で自然災害などが起きた場合に、県青連としてどう対応するかを検討して、被災地への物資輸送の体制など、さまざまなルールを決めていきました。

宮本― すばらしいですね。東日本大震災のとき、私も被災地に入り支援に携わって、災害時に人と人、地域と地域がお互いを思いやることの大切さを痛感しました。被災地支援のしっかりとしたルールができていれば、被災地に寄せる思いを具現化するのに大変役立ちます。
平野― 全国的に青年部で取り組んでいる前例がなかったので、手探りのスタートでした。他県の防災対応の例などを勉強したり、さまざまな人の話を聞きました。今年度からは、県内で災害が起きた際のマニュアル作成を検討中です。
宮本― 商工会地域は町村部が中心で里山里海が多く、自然の恩恵がある反面、自然の脅威も受けやすいといえます。その点からも、防災対策マニュアルは、商工会地域に必要なものと私も考えます。貴重なマニュアルなので、ぜひ、全国の仲間たちに横展開してほしいですね。
平野― 私はこうした青年部活動を通して、人と人のつながりで世界が広がりました。入部当時、先輩から、何かを頼まれたら「はい、わかりました」といったほうがいいと教えられました。当時はよくわかりませんでしたが、そうやっていろんな経験や人との出会いができ、先輩の言葉の意味が理解できるようになりました。最近は後輩にも伝えています。
宮本― その通りですね。私の好きな言葉がまさに「自修自得」。自分が行動し、実践したことでしか、人は成長できないと思っています。今後も「はい、わかりました」の気持ちで、貴重な経験を重ねてください。